純ジャパ20歳で世界が認める英語教員資格ケンブリッジCELTA取得の劇的ストーリーとは?

こんにちは!朝から晩まで英語の教材開発をしているタクトピアの嶋津です。今回は大変嬉しいニュースがあり、急遽インタビューすることになりました。それはタクトピア創設当初から様々なプログラムに携わってくれている林ゆうきくんが世界が認める英語教員資格ケンブリッジCELTAをおそらく日本人最年少で取得しました!

日本で普通の英語教育を受け、普通に13歳から英語を学び、ハリーポッターにどハマりして高校3年次にイギリスの高校に編入し、IELTS7.5を獲得!そして昨年見事ロンドン大学(UCL)に合格しました。林くんとは僕がロンドンにいるときからロンドン宅に遊びに来たり、ご飯を食べに行ったり現地でもプログラムを手伝ってもらったりしていました。

17862658_10212772941499521_6748742882842148249_n
嶋津のロンドン宅でカレーパーティー

そんな彼が今回CELTAに挑戦し見事合格!僕自信も26歳の時に何とか取得したCELTAですが、ネイティブに混じって20歳で取得するとはまだ信じられません。彼のCELTA取得までのストーリーをインタビューしましたので是非ご覧ください!

20031612_1213600045453043_143267894217467197_n
林くんのCELTAチューターとフェロー

嶋津:まず今回はCELTA取得本当におめでとう!この過酷で有名なCELTAを受けてみての感想は?

林:ありがとうございます!この1ヶ月間とにかく忙しかったです。毎日早朝から英語教授法の理論やテクニックを学び、午後から多国籍クラスの生徒を対象にしたレッスンをするという日々を送っていました。自分のレッスンが終わったらチューターから厳しい指摘を受け、振り返りをして、そのすぐ直後から次の授業内容や構成について考え始めなければなりません。授業やレッスンだけならなんとかなるのですが、さらにそれに加えて課題エッセイも並行してやっていかなくてはならなかったので、かなり大変でしたね。なので、クラスの中には途中でドロップアウトしてしまった人もいました。ただ、それだけ学びも多く、CELTA取得後には英語教育に対する姿勢が180度変わりましたし,受講して本当によかったと思っています。

嶋津:大変だったね。僕のときも16人中6人ドロップアウトしたよ。本当によく耐え抜きました。やっぱCELTA受講してよかったね。周りにはどんな感じの人がいた?

林:場所がロンドンということもあって、様々な国から来ていましたが、僕以外は全員ネイティブでした。イギリス、アメリカ、インド、シンガポールなどですね。イタリア国籍の人がいましたが、その人はインターナショナルスクール出身だったので英語はネイティブレベルで完璧でした。僕は最年少で唯一の大学生だったので、みなさん可愛がってくれました(笑)

嶋津:やはりノンネイティブはいなかったのか。じゃそもそもCELTAを受講したきっかけは?

林:よく「日本人は英語が話せないからもっと使える英語を教えるべきだ」と言われていますよね。それ自体に異論はないのですが、「じゃあ具体的にどのようなことをすればよいのか」という解決策を僕はあまり聞いたことがありませんでした。「授業で英語を話す機会を増やせばそれでよいのか?」「じゃあ英語を話す機会を増やすにはどのようなアクティビティーを行えばよいのか?」。このような問いに関する答えが、僕の過去の英語学習歴からは見えてこなかったんですね。ですから、世界で認められているCELTAを受ければ完璧な答えとまではいかなくとも、日本の英語教育に応用できることがあるのではないかと思い、受講を決めました。

嶋津:確かにCELTAは日本とは真逆のアプローチだからね。英語が本当に好きだったみたいだけど、これまでの英語教育歴を教えてください。

林:小学生の頃に英会話の教室に少し行ったことはありますが、本格的に学び始めたのは中学1年生からです。中学1年の学年末の英語の試験で教科書の暗唱問題などが出てきて、40点くらいの点数を取ってしまい、そのときは正直英語が嫌いになりました(笑)。ただ、中学2年生のときに仲の良い友達とハリーポッターの映画を見て、英語のかっこよさに憧れるようになり、それからは英語がずっと好きですね。よく映画の登場人物のセリフを何度もリピートして暗記したりしていました(笑)学校の英語の勉強よりもそっちが夢中でしたね。他には、東京に行った際には駅で迷っている海外からの観光客に自分から積極的に話しかけて英語を話す機会を作ったり、ネイティブの発音を身に付けたいと思い、オバマ元大統領など有名人のスピーチを真似したりと自分なりに面白く英語を学ぼうと頑張っていました。とにかく必死でしたね(笑)

嶋津:やはり英語を好きになるきっかけとか、必要性を感じる瞬間が大事だね。具体的にゆうきの受けてきた日本での英語の授業とCELTAではどのような違いがあった?

林:英語習得に対する考え方とアプローチが全く違いました。僕が受けてきた学校の授業では、ほぼ毎回文法の授業が中心でした。毎日新しい文法を習い、それを宿題で復習するということの繰り返しでした。

しかし、CELTAではReading, Listening, Grammar, Vocabulary, Speaking, Writingというように、様々な技能を組み合わせながら授業の構成を考えます。1回の授業でこのうちのどれか1つだけを扱うというわけではなく、全ての技能を統合して行います。特に、スピーキングは授業の最初と最後に必ず取り入れます。授業の中心である生徒が主役なので、「生徒で始まり、生徒で終わる」という感じでした。

さらに、CELTAでは授業の中でコンテクストを重視します。どういうことかというと、例えば、僕の行った授業の1つにプレゼンテーションを題材にしたリスニングのレッスンがありました。そこで、始めに僕がスピーチをしている写真を生徒に見せ、僕が何をしているのかを生徒に当てさせます。その後、生徒をグループに分けてそれぞれの生徒が過去にどのようなプレゼンテーションをしたのか、その際に緊張したかなど、グループで話しあったりしました。これをやったのとやってないのとでは、生徒の授業に対する姿勢がかなり違ってきます。なぜなら、生徒間、もしくは生徒と先生の間にコミュニケーションが生まれるとともに、この後にくるリスニングの課題をやらされるというよりも、プレゼンテーションについて自分自身が話している・自分自身が学んでいるという感覚になるからです。「英語を磨くために問題をたくさん解こう」というのはできる人にはできるかもしれませんが、英語に対してのモチベーションがあまり高くない生徒はこれをつまらないと思ってしまう。それは前後関係がなく、課題をやらされているという意識が常にあるからなのではと思います。コンテクストを設定することでその意識が圧倒的に薄れるのではないでしょうか。

嶋津:CELTAは日本の英語教育に足りない部分を補ってくれると思うのですが、日本の英語教師におすすめできますか?

林:僕ももっと多くの方にCELTAを受けてほしいと思っています。CELTAではコミュニカティブアプローチというコミュニケーションを通して英語を学ぶ方法を習うのですが、自分自身の経験を振り返っても日本の学校ではあまり見られません。日本人の一番の課題とされるスピーキングは特にこの教え方がとても効果的なのではないかと思っています。ではなぜ日本の学校ではあまり見られないのかというと、クラスの人数の多さも1つの理由だと思うのですが、まずこのコミュニカティブアプローチで英語を習った経験のある先生、もしくはその存在を知っている先生が少ないからなのではないかと思います。

CELTAは英語教員のみ対象ではなく、英語教授経験のない方も受講できるコースであり、CELTAを受けに来る人のバックグラウンドは多種多様です。事実、僕はクラス最年少で唯一の大学生でしたし、銀行に勤めていてキャリアチェンジを目指している人やもともと幼稚園の先生だったが台湾で英語を教えることになりCELTAが必要になった人など、様々です。CELTAを受講すれば、英語教育界で効果的とされている教え方やセオリーが1から学べるようになっています。

嶋津:日本の英語教師がCELTAを受け始めたら日本の英語教育は激変すると思うね。CELTAに合格するまでのプロセスをどんな感じだったか教えてください。

林:CELTAのアプリケーションは3つのステージに分かれています。まず、1つ目は書類審査でCELTAの目的に合ったふさわしい人材か、英語力や学力は標準に達しているかなどを見ます。書類審査を通ると、次は文法などに関する課題や作文が出され、出願者がきちんと言語としての英語を理解しているか、そして出願者の英語(授業)に対しての姿勢を見極めます。ただし、この課題は文法書の使用が許されているので、生徒に対して「CELTAを受ける前にこのようなことについて知っていてください」という準備の手助けでもあると思います。そして、課題を通過すると最後に面接があります。これが個人的に一番大変なのではないかと思います。もし、ここで英語力が足りないと判断されたりすると不合格になってしまうので、面接の前は少し緊張してました。海外からの出願者の場合、面接はテレビ電話で行いますが、僕はその時ロンドンにいたので、直接CELTAを受講するセンターに行きました。面接の日にはそこでまた筆記の試験があります。内容は間違え探しと英語の作文でした。その後面接ですが、内容はその筆記試験と提出した課題について、そしてどうしてCELTAを受けるのか、CELTA修了後どのようなことをやりたいのかなどの個人に関する質問なども用意されています。個人的な質問に加えて、クラスルームで起こりうる問題が与えられてそういった場合あなたならどうするかという質問もありました。僕のインタビューでは議論が白熱して、約2時間という長いものでしたが、ふつうは40分から1時間くらいでしょうか。嶋津さんの時はどうでしたか?

嶋津:CELTA合格までのプロセスは本当に複雑で大変だったね。面接時間は僕の場合も比較的長くて1時間くらいだった。僕がCELTAを受講したシェフィールドでも日本人が受講するのが初だったということと、IELTSの条件が8.0以上で自分の英語力が完全に足りてなかったから、必死に「文法はできますよ」とアピールをした覚えがある笑

林:僕もIELTS8.0は足りていなかったので、面接で「CELTAを受けることが僕にとってどんなに大切なのか」を必死にアピールしました(笑)

嶋津:そもそも条件としてIELTS8.0はきついよね。CELTAのプログラムの中でこれは面白いと思ったものはありますか?

林:課題のエッセイの一つであった’Focus on the learner’がとても面白かったです。どういうものかというと、英語を第二言語として学んでいる生徒にインタビューをして、第一言語がその生徒の英語にどのような影響を与えているかを調査するというものです。僕はイタリア人にインタビューをして、作文を提出してもらい、彼の英語の使い方に現れるイタリア語を話す人が間違えやすいポイントなどをまとめました。例えば、イタリア語ではvery, much, manyは’molto’という単語ですべて表せてしまいます。そのため、イタリア人はこれらの使い方を間違えやすいということがわかります。このような分析は英語を教える上でとても大事です。生徒があっての授業ですから、生徒を理解するのは非常に大切ですよね。いまの日本で英語を教えるとなると、クラスの中はほぼ日本人ですので、英語の先生は日本人に必要なスキル、間違えやすいポイントというのをあらかじめ知っておくことが重要です。

嶋津:あの課題はかなりためになったね。僕はポーランド人にインタビューして録音させてもらったけど、その生徒の発音がそもそも聞き取れなくて、何度も追加インタビューさせてもらったよ。ではCELTAで苦労したことは?

林:最初は他のクラスメイトが行った授業へのフィードバックにとても苦労しました。詳しく説明しますと、授業を行った後に必ずフィードバックといって、その日に授業を行った人の良かった点、そして改善すべき点をグループで議論します。僕のチューターはフィードバックに特に厳しく、「自分の発言に対する具体例と理由がなければその発言自体無意味」ということを何度も言われてしまいました。僕はこのようなフィードバックをする経験が今までなかったので、始めは「ここの部分がとてもよかった」などの抽象的な発言が多かったのですが、徐々に慣れてくると具体例や理由を挙げることができるようになりました。かなり厳しい指摘も多々あったため、フィードバック後にはクラス全員が慰めあっていましたね。

嶋津:僕もフィードバックが一番きつかったかも。僕のコースでは毎回誰かが涙を流していて本当にここまでフィードバックをする必要があるのかと何度も思ったね。誰かが泣き始めると担当のチューターがそのフェローを別室に連れて行き、泣き止む前で個別フィードバックをするという場面に何度も遭遇した。僕の場合は最初からダメ出ししかされなかったから泣くまでもなかったけどね。他に大変だったことは?

林:レッスンプランですね。これは本当に大変(笑)授業の構成、各アクティビティーを行う上でのインストラクション(指示)の原稿作成、時間配分などに加え、Language analysis (LA)という文法や単語に関する分析をしなければなりません。その際に、生徒が間違えやすいポイントなどもまとめなければならないので、時間がとてもかかります。ただ、LAは英語を教える上でとても大切なものだと思います。具体的には、その単語(文法)の意味、構成、発音のこの3つにおいて何を知らなければならないかをまとめるというものです。

嶋津:LAを通して始めて気付くことも多いよね。そしてレッスンプランは本当に地獄。作るのはいいんだけど、チューターから授業許可がギリギリまで降りないから当日直前まで何度も書き直しフィードバックを受けるって感じだった。チューターからしつこく指導されたこととかなにかある?

林:そうですね。’Elicit, not explain’という言葉を初めの2週間はほぼ毎日聞いていた気がします(笑)Elicitというのは生徒から答えを引き出すという意味で、先生が答えを言うのではなく、問の形にして生徒に答えを考えさせるというものです。例えば、生徒が ”She likes”ではなく、”She like”という間違いをした場合、そこで先生は正しい文法を教えずに聞き返して生徒自身に間違いを気づかせてあげます。そうすることで、生徒は主体的に学ぶことができ、思考する機会も増え、記憶に残りやすいみたいです。

嶋津:ImplicitにElicitしてNoticeさせるがCELTAの基本だよね。では最後にCELTAを受講して日本で必要な英語教育とはズバリ?

林:いまの日本の英語教育は常に先生がクラスの主役となっています。先生が生徒の前で話し板書して、生徒はそれを聞いてノートを取るという状態がずっと続いています。しかし、英語を使えるようになるには、自分から英語をどんどん使っていくしかありません。CELTAでは、先生の話している時間と生徒が話している時間の割合は3対7が理想だと習いました。ペアワークやグループワークをもっと増やして、生徒が実際に英語を使える環境を整えることが大事だと思います。

そして、もう一つは発音に重点を置くことが大切だと思います。例えば日本語は母音が5つありますが、英語には20もの母音が存在します。日本語と英語はかなりかけ離れた言語なので、日本語の通り英語を発音すると、違う単語になってしまったり、意味が理解されないことがあります。僕のCELTAのチューターが、「生徒が一番質問しにくるのは単語や文章の発音の仕方だ」と言っていました。自分の発音が正しいかわからないがために、英語を話したくないというケースはよく目にします。僕も中学生の時に発音の仕方がわからず、人前で間違えたくなかったので、指名されても読みたくないと思った経験があります。生徒がクラスの中で英語を使える環境を作るためにも、発音の足場作りはとても重要だと感じます。英語を正しく発音できることが生徒の自信に繋がり生徒が主体的に学習し始めると思います。

−−−−−編集後記−−−−−

林くんの凄いところはどんなことでもまずアクションを取る!という行動力と、それと同時に内発的動機から来る英語に対する憧れが彼をここまで成長させていると思います。学校教育の中で自らアクションを取り英語が必要となる環境に飛び込むような生徒をどんどん育てていかなければならないと感じました。まだ今年の秋からロンドン大学2年目の林くんの今後の活躍にも期待しています。

11988647_546518022166727_2376545836056701942_n
タクトピアで行った初めてのキャンプにも参加