Interview#04〜東南アジアに魅せられて〜「自分の専門分野をつくることで、女性として人生と仕事を楽しむ。」 タイで働く弁護士へのインタビュー

こんにちは!タクトピア東京オフィスの渡邉です。今回は、タイで弁護士として働く、保戸山 理恵さんと対談してきました!「東南アジアってカッコいい!」そんな想いを抱いた高校生の原体験から、日本を飛び出し海外へ飛び出した経験を持つ保戸山さん。自分の好奇心や信念にいつも偽らずに進む彼女のストーリーに迫ります!

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保戸山理恵さん>中央大学法学部卒、ロースクール進学後に弁護士として日本の法律事務所に勤務。弁護士業の傍ら、NPOや様々な社会活動への参加を通じて、自分が目指す弁護士像を探究。現在は、タイのAsia Alliance Partner Co.,Ltd.で日本法弁護士として働く。

それでは早速!保戸山さんは、今までどんなキャリア選択をされてきましたか?
小学生の頃からずっと弁護士になりたったんです。私が大学の法学部に入るか入らないかの時に、弁護士になるキャリアパスとして日本にロースクールが設置されたので、ロースクールに進学・卒業後、司法試験に合格して弁護士になりました。

弁護士になるまで他の業界のことを真剣に勉強することもなく、良くも悪くも一直線に弁護士になってしまいました。他を見ることで、自分が迷ってしまうのが怖い、という気持ちもありました。そのせいか、いざ司法試験に合格して、「自分はどんな弁護士になりたいんだ?」と考えた時に、いまいち明確なイメージが湧いてこなかったんですよ。笑

なるほど、、そもそも何で弁護士になりたいとおもったの?
そうそう。気になりますよね。私の家族や周囲には、全く法曹関係はいませんでした。

それで弁護士?また何で?
子供のころから、曲がったことが嫌いで負けず嫌いでした。
二つ上の姉がいるんですが、姉は、体型や人付き合いが得意ではない性格のせいか、近所や学校でよくからかわれていました。年が近いため、姉のことで私もからかわれることが結構あって。

そんなとき、たとえ相手が年上だったり学校の先生だったりしても、相手の言っていることが正しくないと思ったら絶対に受け入れられなかった。それで、喧嘩になったり授業をストライキしたりもして。
そんな経験から、“自分が正しいと思っていることを正しいと言えるオトナになりたい”という気持ちが生まれました。そして、そのためには、会社組織に入るんじゃだめだろうとも思い始めました。
自分が、結婚して家庭に入るようなタイプじゃないことは子供ながらに自覚していたし、どうせなら長く誇りをもって続けられる仕事に就きたかったんです。とすると、資格の専門職だな!と。

子供のころは、資格の仕事といっても、お医者さん、看護士さん、弁護士ぐらいしか知らなくて、頑固で負けず嫌いな自分には、弁護士が向いているんじゃないかと思いました。
正直、誰かを助けたいという熱い気持ちがあったわけではなく、生来の性格や”弱い者いじめ”に対するぼんやりとした正義感が、弁護士を志したきっかけです。

じゃあ、弁護士になった後、どうして今東南アジア(タイ)にいるのかというと、高校生の時に、東南アジアに興味をもつ原体験があったからだと思います。高校進学後、海外留学を目指す友だちの影響で、私も少しずつ海外に興味を持つようになりました。そして、高2の夏休みに、世界各国の同世代が、日本の農村でワークショップに取り組む国際交流キャンプに参加しました。
その時、自分にとって一番カッコ良く見えたのが、東南アジアの同世代だったんです。

え?カッコいいって?
そのときキャンプに参加していた東南アジアからの留学生は、タイ・ベトナム・バングラディシュからの国費留学生。どの国も今以上に発展途上だったし、一人ひとりが、国を代表して日本に勉強に来ていることを強く自覚していました。みんな、自分の国の将来を本気で心配していたし、「母国の発展のために何ができるか?」と、真剣に考えて勉強していました。

私は、当時、「こんな同世代がいるんだったら、これから東南アジアはどんどん面白くなるだろうな。」と感じました。

私自身は、そのキャンプ後も弁護士を志す気持ちは変わらず、大学、ロースクールを卒業し、無事弁護士に。いざ弁護士になった後、弁護士としての自分の専門性に迷うとともに、同世代が立ち上げたNPO活動に参加しているうち、「自分が真剣に取り組める社会活動は何か?」と考えたりもしていました。そうした時期に、ミャンマーで会社を立ち上げる人やバングラディシュでボランティアをしている人など、東南アジアを舞台に活躍する魅力的な人たちに出会いました。

ちょうど、弁護士としても、東南アジアのビジネス法務に対する関心が高まっていました。そんな時に、たまたまバンコクの法律会計事務所の採用募集を見つけて思わず応募したら、自分のポテンシャルや意欲を買ってもらえたようで、無事採用されました。

当初は、法務に専門的に取り組める環境ではありませんでしたが、タイに来てからたくさん良いご縁があり、最終的に、弁護士としてやりたい仕事ができるようになりました。

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職場のタイ人の仲間と一緒に近くのレストランへ

海外にいざ出て、新しく見つけたことや考えたことってある?
弁護士として労働問題についての相談を受けることも多いせいか、”仕事に対する価値観”の違いを感じることは多いです。タイの多くの人は、日本人のように仕事中心の生活を送っていないし、仕事に対する考え方がクール。定時きっかりで帰る人が多いし、転職率も高い。それに、タイの人は、人生を楽しむことが上手で、そこに罪悪感を感じていない。

タイは、日本に比べると制度的に遅れている部分もまだ多いし、貧富の差は日本と比べものにならないぐらい大きいけど、労働者を保護する法制度や実務はだいぶ進んでいるし、女性の社会進出がすごく進んでいる。同じアジアでも、日本のような過労による社会問題なんてほとんどない。
社会的・文化的背景の違いも大きいだろうけど、日本が東南アジアから学ぶべきところも多いんじゃないかと思います。日本人は、真面目過ぎるし、人生を楽しむことが下手だな、とタイに来て改めて実感しています。

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タイのカフェ(タイはカフェでのんびりする文化が根付いているので、日本以上におしゃれなカフェがたくさんあります!)

日本は働き方の種類やパターンが少ない気がしているんだけど、どう思います?
労働の質より量が重視されるような古い価値観が残っている職場が、まだまだ多いと思います。
そんな価値観の職場だと、仕事中心の生活を送らざるを得ないし体力勝負になってしまうから、本当に賢い人は去ってしまうし、女性が長く活躍すること
も難しい。

タイでは、会計士や弁護士といった専門職における女性率も高いし、家庭を持っていても仕事を続けることが当たり前。私は、タイに来て日本の労働環境に対する疑問が強くなったし、タイを含め海外各国の労働関係実務に対する興味が高まりました。近い将来、日本におけるライフワークバランスの向上につながるような研究、活動がしたいと思うようにもなりました。

これからも大切にしていきたいことはありますか?
今の日本で、自分のやりたい仕事に自分のペースで取り組める環境を創るためには、他の人とは違う専門性を持つことが近道になるんではないかと思っています。特に女性が、人生全体のペース配分をしながらやりたい仕事に取り組むには、工夫が必要なんだと思う。

自分の特性や興味がある分野をいくつかを掛けあわせることで、ニッチな専門分野が持てるのが理想。私であれば、«弁護士×女性×東南アジア≫みたいな。

そういった専門分野を確立できたら、競争相手が少なくなるから、体力勝負をする必要もなくなるし、より柔軟で自由な働き方が実現できると思います!

ありがとうございました!うーん!女性として勉強になります!
これからの活躍も応援しています!

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