ELT BLOG VOL. 08 世界最大の英語教育学会IATEFL2018

こんにちは!ELTインターンの横井です。

今年も開催された世界最大の英語教育学会IATEFLに弊社嶋津幸樹が参加してきました!

IATEFLとはInternational Association of Teachers of English as a Foreign Languageの略称で、1967年に創設された英国で毎年春に開催される英語を外国語として教える教員や教育関係者のための国際学会です。

iatefl2018

去年に引き続きインターン横井が、IATEFLから教わる7つのことを報告します!

そもそも私たちが当たり前だと思っていた英語学習に関する「常識」が間違っていた!?

そんな話から、語彙の習得やIELTSに代表される評価方法に関することまで幅広くお伝えします◎


30712140_10216355543462331_39958039259774976_n

タクトピアELTの嶋津幸樹です。3年連続3回目のIATEFL、一昨年はマンチェスター、去年はグラスゴー、今年はロンドンから南に2時間ほどの場所にあるブライトンで開催されました。そして世界中から3000人以上が参加するこの学会で日本人には1人しか遭遇しませんでした。毎年4月上旬にイギリスで開催されるので、時期的には日本の英語の先生には優しくない学会です。

TAKTOPIA ELTの看板を背負って世界中の英語教育関係者と交流し情報交換をしてきました。4日間学会は朝9時から始まり交流会や食事会は毎晩夜12時まで、フル稼働で最終日のセッションは半分意識が飛んでいましたが学びの多い学会でした。

 

 

 

30704777_10216355539982244_1824571767415373824_n

今回最も注目していたのは第二言語習得研究で有名なジョージタウン大学のLourdes Ortega客員教授です。早速初日に2ショットとサインをゲットしました!そして日本の英語教育についても色々と意見を頂きました。大学時代に彼女のUnderstanding Second Language Acquisitionという本にハマり何度も読み返した想い出があります。彼女は6月に早稲田大学で開催される言語教育心理学会 第三回国際大会にも参加予定です。そんな彼女の基調講演から初日のIATEFLは始まりました。

 

 

 SLA(第二言語習得)の神話:それは本当に正しい?

世の中には当たり前と思っていても正しくないことが数多く存在します。言語習得においても脳科学に基づいた研究が進んできたとは言え、医学と同様、まだ解明できていないことは多々あるのです。

だからこそ人間は経験談に基づいた「当たり前」を確立してしまいます。

それは教育政策にも取り入れられ、知らず知らずのうちに教育業界でも科学的根拠のない「当たり前」がはびこってしまっているケースは珍しくありません。

Lourdes Ortegaの基調講演でそんな当たり前の知識の在り方について考えさせられる問いから幕が開けました。

Picture1

基調講演を行うLourdes Ortega客員教授

「タバコを吸うことで人は死ぬ」と言われていますが、実際にタバコを吸っていても100歳まで生きる人もいます。研究結果は全てではないので、自分が信じていることは本当に正しいのか?これまでの癖や慣習はそのままで良いのか?と考えることが大切です。

Ortegaは知識の在り方から研究者と教師の関係性SLAにおける神話についてなど幅広い内容を扱っていました。現場の教員は研究結果が自分の教室で抱えている問題を解決でしてくれる特効薬になると期待しますが、多くの研究者は研究結果を現場に応用する際には注意が必要だと考えています。研究結果を鵜呑みにせず、何が正しいのか、どう活用するか考える必要があるということです。

そんな話から始まった今年のIATEFLは今まで「当たり前」だと思われていることが覆されていきました!

1. 早期英語教育:「英語を学ぶのは早ければ早いほうが良い」は間違っている?

「英語は早く始めたほうが良い」という言説は日本の保護者の中で常識になっています。これも自分が早期英語教育を受けてこなかったから英語ができないという思い込みです。

言語習得における適齢期についてはこれまで数多くの研究がなされてきましたが「Earlier is better(言語習得は早ければ早いほど良い)」というのは間違っているということは研究で既に明らかになっています。外国語として英語を学ぶ移民などにとっても「Later is faster(遅く始めたほうが早く習得できる)ということは証明されています。認知能力や思考力が成熟してから外国語を体系的に学ぶ方が効率が良いということかもしれません。

また、日本人の先生から英語を教わった保護者が自分の子どもには「ネイティブスピーカーから英語を習ったほうが良い」と思っているということはよくありますが、これもまた思い込みだということがわかっています。

これまで言語を指導する時にはイマージョン教育(習得したい言語のみで教育を行うこと)が良しとされてきました。英語を英語だけで学ぶというコンセプトに惹かれ日本各地にイマージョン教育を売りにする学校が生まれました。さらに2008年の高等学校新学習指導要領では「英語の授業は英語で行うことを基本とする」ということが明示されてしまいました。しかし、その信仰とは反対に、今回のIATEFLではL1 use(第一言語使用)の有効性(2.参照)に関する研究発表が9つもあり、これまでの当たり前を覆されました。

2

これまでのSALの神話

Teaching is complex, and teaching a language is particularly complex, and there are no straightforward formula or recipes that will be effective in every context.(Andon& Leung, 2014, p. 70)

「教えるということは複雑で、言語を教えるというのは特に複雑であり、どのコンテクストにもあてはまる効果的な公式やレシピは存在しない。」

最後にこの引用文を映し、知識というものは矛盾している部分もあれば潜在的に正確であることもあるが、個人によって結果は変わるということを認識しなければならない、と基調講演を締めくくりました。常に自分の当たり前を問い正し、Transform habitual practices!(習慣を変える!)という言葉を常に心がけていくことが大切だということです。

 

2.L1 USE(第一言語使用):文部科学省のイングリッシュオンリー政策は間違っている?

Ortegaが注目する今回の学会で最もホットなトピックであるL1 Use(第一言語使用)の最新の研究結果を紹介します。実際にL1 UseのフォーラムにOrtegaもオーディエンスとして参加していました。

効果的なL1 Useとは英語の授業で第一言語(日本の場合、日本語)を補助輪として活用し、学習者の目標言語獲得を手助けするものです。

日本では英語の授業は日本語で行われていることが多いのが現状です。平成25年教育実施状況調査では約半数の英語教員が「概ね英語で授業を行っている」としたものの、日本において(ちなみに中国や韓国も)予備校の人気講師などは第一言語のみの授業をしています。このL1 Useの研究は英語のみで授業をしていることを前提に、どの程度L1を使用することが有効かを考えていきます。

3

Forum on The use of L1 in the classroom: Should L1 be used to teach English to young learners?/ Fiona Copland (University of Stirling) スターリング大学の研究発表

 

まずは日本の小学校を対象に行われたスターリング大学の興味深い研究発表についてです。

イマージョン教育に代表されるような習得したい言語(英語)のみで言語教育を行うというのは1970年から主流でした。上記にあるように日本でも2008年に所謂イングリッシュオンリーの政策が謳われ、L1 Useの効果については様々な議論がされてきました。1990年代のL1 Use反対派は「教室内では英語を最大限に聞いて使ったほうがいい」「2つの言語を混ぜると混乱する」などの意見があり、今でも日本の教育現場に行くとイングリッシュオンリーの授業が評価されモデルとされています。

ここで日本の教室内でのネイティブスピーカーの英語教師(モノリンガル教師)と生徒のやりとりを見てみましょう。

 

<教員が出席を取る場面>

モノリンガル英語教員:Nagomu?

生徒: 遅れ

モノリンガル英語教員: Oh, he’s absent. Say absent, absent.

生徒: Absent

※出席を取るモノリンガル教師が日本語がわからないことにより生徒が発言した「遅れ」を「欠席」と勘違いしてabsentという単語を指導してしまう場面です。

 

この他にも様々なミスコミュニケーションの事例を挙げながらどのようにL1を使用することが有益かというディスカッションが行われました。

ちなみに、2015年に行われたケンブリッジ大学出版のイベントで、英語教育界で有名な学者Scott Thornburyは以下のように述べています。

「心理言語学でも証明されているのはバイリンガルの脳内で2つの言語システムはリンクし合っていて互いに影響を与えているということ。つまり日本人が英語を学ぶときには英語のみで学んでいるときでも潜在的に日本語が介入していると神経科学者は言っている。この影響力を無視して英語のみで教えることで非効率的な言語習得が起きている。学びを最大化させるためにはこのL1を有効利用してNegative transfer(第一言語の影響による第二言語の間違がった使い方)ではなくPositive transfer(第一言語の影響による第二言語の効率的な習得)となるように心がける必要がある。」

つまり、「英語を学ぶ際には、生徒が持つ日本語の能力を活用することで、最大の効果が得られる」ということです。L1 Useは既に知っている知識を引き出しながら学びを最大化できます。

但し、これまで日本の学校では日本語で明示的に文法を指導することが主流になっていました。英語でのインプットを基本としながらJudicious use of L1(賢明な第一言語使用)を心がけることが大切です。

4

スターリング大学の研究発表

結論として多くの(ほとんどの)英語教員は授業において「第一言語を使用するのは悪である」と思い込まれていますが、教員自身が「バイリンガルのロールモデル」となり、生徒がすでに知っていることを有効利用するべきでなのです。

“Maximise the amount of English”(英語の量を最大化する)という強引な思い込みから“Maximise the learning”(学びを最大化する)という科学的で効率的な手法に移行していく必要があると強調していました。

 

3.世界基準の英語能力試験IELTS(アイエルツ):ライティング7.0獲得のテクニック

日本でも2020年からの民間試験活用の動きがあり、世界基準の英語能力試験であるIELTSやケンブリッジ英検の知名度が急速に上がってきています。これまで日本では国産の英語試験が評価され、今でも高校生のほとんどがIELTSという言葉すら知らない状態です。このIELTSライティングセクションにおける高得点を獲得する方法のお話もありました!

IELTSとは?IELTS (International English Language Testing System) アイエルツは、海外留学や海外移住の際に必要な資格の1つで、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど140カ国、約10,000の教育機関・国際機関・政府機関が採用し、年間300万人が受験する、世界的に認められた英語運用能力試験です。アメリカでは、約3,000校の大学がIELTSを採用しています。日本国内でも多くの大学入試で採用されています。

 

年間300万人が受験するIELTSとはどのようなテストなのか?気になる方は、スピーキングにフォーカスしながらDMM英会話に寄稿しましたのでご覧ください。

6

How to aim for 7.0 and above/ Lewis Richards (University of Portsmouth) IELTS指導経験20年のベテラン教師の講演

今回の講演では、日本人学習者が最も苦手とするIELTSライティングの得点方法を解説していました。日本の平均スコアは5.38と世界基準を大幅に下回ります。IELTS指導経験20年のベテラン教師からIELTSライティングで確実に7.0以上を取る方法で攻略すべき7つのテクニックThe Magnificent Sevenを教わってきました。

<The Magnificent Seven>

1.Conditionals (for explanation/ solutions) 説明や解決策のための条件を提示する

2.Modals (for solutions/ avoiding generalization) 解決策のためまた一般化を避けるための形式にする

3.Present perfect (to describe recent changes and trends) 最近の変化やトレンドを描写する

4.Not only…but also (to introduce the second idea) 二つ目のアイディアを導入する

5.Uncountable and singular/ plurals (for accuracy) 単数・複数形や不可算名詞を正確に使う

6.Participle clauses (‘Having looked at this issue in detail…’) 分詞節を使う

7.Relative clauses (to evaluate and comment) 関係詞を使う

 

ほかにも戦略として活用できるテクニックを多数紹介して頂きましたがIELTSのネタはたくさんあるのでまた別の機会に紹介します!

タクトピアではオンライン講座のモニター募集をしています。こちらの講座内で今回の学びをふんだんに盛り込んでいきます。

IELTSオンライン講座はこちらへ。※ 現在は申込を停止しています。

Picture

 To ‘errr’ is human: strategies for higher-level IELTS Speaking success/ Greg Archer (Cambridge University Press)

 

4.最新の語彙習得理論:APPLEとORANGEを同時に教えてはいけない?

個人的にも興味があるのが語彙習得です。高校時代から英単語帳マニアだった僕は学部も修士も語彙習得理論の研究をしました。今回参加した講演では、2017年にオックスフォード大学出版から発売されたStuart WebbとPaul Nationの共著How Vocabulary is Learnedの内容を抜粋して最新の研究結果をクイズ形式で紹介していました。

Picture1

Lexical sets are history: insights from vocabulary research/ Tim Herdon& Andrew Dilger (Oxford University Press)

教育を受けた成人の語彙レベルは15,000-20,000、10歳の子どもは8,000-9,000、習熟前の子どもは3,000-4,000というデータがあります。週に15-25語習得した場合、月に60-100語、年間500-1,000語、8年から16年で8,000語、ネイティブスピーカーの15,000語を身に付けるには15-30年かかるという計算になります。

つまり語彙学習というのは時間のかかる作業で教室外で積極的に自律学習していく必要があるということです。自律語彙学習において重要な4つの戦略はThe Matthe Effectと呼ばれ、①単語をパーツで覚える②コンテクストから推測する③辞書を効果的に使う④教室外で使用する、とされています。

では語彙指導をするときにどのようなことを気をつけるべきなのか、初歩的な語彙習得理論から最新の研究結果までを紹介します。

1960年代に確立された理論で反義語や同義語を同時に提示すると学習者は習得するのが難しくなるというものがあります。

つまりHot(熱い)&Cold(冷たい)、West (西)East(東)、right(右)&left(左)などは場面を分けて遭遇したほうがいいということです。同義語も同様にadvanceやprogressやスペルも似ているadaptやadoptなどは別の場面で学ぶ必要があるということです。

最近の研究では形が似たものも習得が難しいということがわかっています。

例えばapple&orangeapple&bananaでは後者のほうが習得しやすいということがわかっています。これまでは似た単語同士をグルーピングして覚えやすくなると思われてきましたが、週の英語を学ぶときも別の場面で覚えたほうが効率がよいということがわかっています。

つまり中学1年生にも唐突に色や週、月のリストを提示するのではなく、自分の好きな色、自分の誕生日や家族の誕生日、好きな季節や月などのコンテクストの中でも遭遇を繰り返すアクティビティをした上で、それらのLexical sets(同じシチュエーション、文脈で使われそうな単語をまとめたもの)を提示して整理することで効率的に覚えることができます。

ストーリーをもたせて提示することが大切ということです。例外として以下のようなことが挙げられます。

Rabbits are fast and tortoises are slow.「うさぎは速くカメは遅い。」

Fastとslowという対義語が同時に提示されていますが、ストーリー性があることで学習負担は減るということもあります。

さらにアドバンストレベルの語彙習得理論でもWebbの最近の研究では、

① abhor, boulder, crave, sob ② lick, mourn, pawn, reef

①と②のどちらのほうが覚えやすいか?というリサーチクエスチョンで高頻出の同義語が存在する場合は関連付けて覚えるストラテジーがあるということがわかっています。語彙習得は個人のストーリーや印象で自分が覚えやすい方法を見出し、メタ認知戦略を利用して覚えやすくすることが大事ということです。

(Vocabulary lists: snog, marry, avoid?/ Julie Moore (Freelance))

 

5.英語の先生はネイティブか?ノンネイティブか?

言語習得において「あの人のようになりたい!」という憧れは非常に大切です。More achievable and realistic role models(より達成できる現実的なロールモデル)の存在を見つけ出すことがモチベーションに繋がります。このプレゼンテーションでは近くにいる仲間からディスカッションや学習戦略の共有を通してモチベーションを得ることができるということでした。

Picture2

Just like me: near peers as role models and content providers/ Laura Patsko & Ben Goldstein

 

次のフォーラムでは、ネイティブの教師とノンネイティブの教師に関するディスカッションがありました。毎度人種差別的な例としてあげられるのが、「講師は全員ネイティブスピーカー」と謳い、白人のみの写真を載せている日本の英会話教室の広告です。日本では資格の有無を問わず白人であることを理由に採用されるケースがあります。英語を話す人口のほとんどがノンネイティブの時代に差別的な表現で生徒を獲得する学校は今の時代にそぐいません。

<生徒が英語教員に求める素質>

  1. 指導に対する情熱があること
  2. フレンドリーな性格であること
  3. 面白い授業をすること
  4. 指導経験があること
  5. 言語の流暢さが高いこと
  6. 適切な資格を有していること
  7. 英語のネイティブスピーカーであること
  8. 地元の文化に精通していること

(※ネイティブスピーカーであることは実はそんなに重要ではないのです。)

 

なんと白人への偏見は日本だけの話ではないようです。音声のみを聞いて提示された複数の人種の写真から音声に一致する人を選ぶという実験で、被験者は英語が流暢な音声に白人を選ぶ傾向があることがわかりました。残念ながら英語が流暢な人=白人という偏見は世界共通のものとされています。誰がどのように英語を教えるべきなのか?雇用者は何を基準に講師を採用すべきか?見た目が外国人=英語が話せるという当たり前を問い正していく必要があります。

Picture3

Forum of ‘Native’ and ‘non-native’ English language teachers

 

6.ケンブリッジCELTA21世紀に求められるスキル

今回大注目の最終日のセッションは「CELTAはまだこの時代にふさわしいのか?」です。CELTAはCertificate in English Language Teaching to Adultsの略称で、これまで権威ある英語教員資格として世界中で普及してきました。条件を満たせば現在70カ国以上300のCELTAセンターにて受講できます。英国では88%の英語教育関係の仕事がCELTAを条件としています。ノンネイティブの受講者数もこの10年で倍増しています。これだけ普及している英語教員資格ですが、1960年から大幅な変更がなされていません。

テクノロジーの発展、脳科学の発達、学びの個別化の重要性への認識拡大など21世紀は全く違う世界の様相をなしています。それに伴って必要な教授法は変わりつつあります。しかし、Cambridge Assessment Englishの調査では未だにCELTAは求められていて満足度の高い教員研修・資格であることがわかっています。それは教育現場がまだ完全に先に述べたような変化を遂げていない過渡期であるからだと考えられます。CELTAも変わっていかなければいけないという風潮はあるものの、まだしばらくは有効な英語教員資格としての地位を保っていそうです。日本でもCambridge Centreが増えはじめているため、近い将来CELTA受講者が増えてくるでしょう。

Picture4

Teacher training in the 21stcentury – is CELTA still relevant? / Clare Harrison (Cambridge Assessment English)

 

7.高次的思考力と低次的思考力どちらが大事?

「ケンブリッジ大学出版のUnlockという教材内に批判的思考を育てる問題が組み込まれている」

昨今、教育業界ではGrit1Growth Mindset2Positive Psychology3, The Whole Child4, Global Competency5などの予測不可能な未来で生き残るためのスキルを育成する新しいアイデアが世の中に出てきています。

1Grit:「困難にあってもくじけない闘志、やり抜く力」

2Growth Mindset:「自分の成長は経験や努力によって、向上できるという考え方」

3Positive Psychology:「個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する学問」

4The Whole Child:「子供の発達と成功のために健康で安全な学習環境を作る教育」

5Global Competency:「OECDが定める人間的尊厳と文化的多様さを基盤にした力」

 

このように従来注目されなかった新しい能力が脚光を浴びています。それらは英語教育においても育てることが求められている能力と言えるでしょう。

ケンブリッジ大学出版のUnlockという教材にはBloom’s taxonomy(学習理論家ブルーム博士が「学習」を6段階の階層に分けたもの)で高次的思考力とされる批判的思考力を育む問題が含まれています。これまでの英語教材は文法理解やコミュニケーションを目的とした言語フォーカスなものが多い中、ケンブリッジ大学出版のUnlockでは質の高い質問で考える力も同時に養う構成となっています。シェフィールド大学のTam Connors-SadekはUnlockの活用法やここで育まれる批判的思考力がこれからの社会でどのように活きてくるのかを解説していました。

タクトピアELTでは2018年4月より東京、山梨、秋田で開講したLinguaHackersでもUnlockを指定教材として活用しています。

IMG_1444

Unlocking and enabling critical thinking in EAP students/ Tam Connors-Sadek (University of Sheffield/ Cambridge University Press)

Bloom’s Taxonomy

 

日本ではアクティブラーニングが異常なほどに盛り上がり、2015年の教育界のバズワードとなりました。教師が教壇に立ち一方的に知識を伝授するのではなく、生徒主体型で高次的思考力の育成に重点を置く教育に移行しつつあります。しかし、アクティブラーニングにも代表されるように、高次的思考力を使うアクティビティに重きが置かれ低次的思考力は軽視されていることに警鐘を鳴らしたのがSchmidtです。Schmidtは低次的思考力は高次的思考力よりも容易なわけではないと言っています。つまり低次的思考力と高次的思考力もバランスをとることが大切ということです。

 

これからの英語教育は書く・話すための指導に留まらず、学習者が学びの軸としての言語を身に付け、自ら思考し、行動する足場作り学びの最大化との循環が起こる環境作りに徹することだと思いました。教師の役割も教材の内容も変わってくる中、やはりTransform habitual practices(習慣を変えること)が大切なのです。


とても興味深い研究結果ばかりでしたね。

日本の学校現場において、より効果的な学習方法や指導法についてのヒントがたくさんありましたが、冒頭にもあったように、研究結果を現場に適用する際には本当に効果的なのか、これまでの自身の経験や現在の生徒の様子などと照らし合わせて慎重に取捨選択する必要がありそうです。

インターンとして英語教育に関わって1年が経ちましたが、それまでは「誰でも英語ができるようになるやり方」があると思っていたのに、言語習得は複雑で、教えるということ、人が学習するということ自体とても複雑なことなのだということを痛感するばかりです。

まさに、

Teaching is complex, and teaching a language is particularly complex, and there are no straightforward formula or recipes that will be effective in every context.(Andon& Leung, 2014, p. 70)

「教えるということは複雑で、言語を教えるというのは特に複雑であり、どのコンテクストにもあてはまる効果的な公式やレシピは存在しない。」

来年のレポートも楽しみにしています!

タクトピアELTインターン横井