TAKTOPIA HUB 【休学座談会】ゲストインタビュー part.4

野地雄太写真最終版

先月9月8日、TAKTOPIA HUB 【休学座談会】が大盛況のうちに幕を閉じました。今回のイベントにご参加頂いたゲストの1人、野地雄太さんの記事を公開致します。高校時代震災を経て、福島に対する自分のアイデンティティを再認識した野地さん。海外大学への留学や国内外でのインターンなど様々な取り組みに挑戦する野地さんのお話をお伺いしました。


◆環境によって人のパフォーマンスは変わる

——どんな子供時代を過ごしていましたか?

福島市の郊外で生まれ育ち、近くの河原や山で遊ぶのが好きな子供でした。中学時代はバトミントン部に所属しました。その部活は人間関係がうまくいかずあまり好きではなかったですね。一方、高校時代の弓道部はうって変わって楽しくて、結果も出ました。仲間意識が強くて、日々練習に行くのが楽しみでした。環境によって人のパフォーマンスって変わるんだと実感しました。人間関係がうまくいかないと、そのスポーツ自体も嫌いになってしまいますし、環境を変えることが凄く大事なんだと思いました。

 

◆福島に対するアイデンティティを再認識した

——福島出身とのことですが、ご自身にとって震災の影響はどのようなものでしたか?

3月11日は中学校の卒業式でした。地震の影響で、進学予定の高校の校舎の半分が使えなくなってしまって。翌月から高校生になったのですが、テニスコートにプレハブを建てて授業を受けていました。入って早々2クラス合同の80人クラスでした。

震災によって、自分たちが取り組むべき課題が見つかったように思います。学校内では完結できない課題が山積みで、それによって社会とつながることができました。2年時になると、校内で「福島復興プロジェクト」という団体が立ち上がり、自分たちが取り組みたいプロジェクトを提案して、それをグループごとに実行していきました。

地元の観光協会や農家の人とともにイベントをする中で、福島のことを発信する立場になりました。そこで初めて自分自身が地元のことをなにも知らなかったことに気づきました。温泉とか、自然とか、今まで自分たちがどういう地域資源に恵まれていたのかを改めて実感させられました。自分が育ってきた土地と、福島に対する自分のアイデンティティを再認識することができました。

野地1地元の小学生向けに開催した桃の収穫祭にて

 

◆多様な人との交流を通して洗練される

震災後、海外からもいろんな方が応援に来ました。支援の一環として教育系のNPOが主催した高校生向けのサマースクールがあり、そこで行われた講演が印象的でした。講演者の方は、中国で1番有名な日本人として知られるコラムニストの方でした。「自分とはまったく異なる人と接することで自分がどういう人間であるかが明確になり、自分のアイデンティティや価値観が洗練されていく。」という言葉は今も鮮明に覚えています。それを聞いて、外に一回出てみて、日本を相対的に見てみたいと思うようになりました。高校を卒業すると、アメリカ・ミズーリ州のドゥルーリ大学というところに進学しました。

のじ2長野県小布施町で行われたサマースクールにて

 

◆自分が成長せざるを得ない環境に自分を置く

———アメリカの大学生活はいかがでしたか?

ドゥルーリ大学での最初の1年間は、入学2か月後に大学の議会に加入し、学生議員としての活動に力を入れました。目の前に転がっている機会をとにかく掴んで、誰よりも濃い大学生活を送りたいと思っていました。議会では学校内で活動する様々な組織の予算や設備投資に関して議論しました。学生団体の代表や財務責任者の方からヒアリングすることでそれぞれの人がどういうことを目指していて、どんな思いで取り組んでいるかを知ることができました。議会に加わることで、自分を成長せざるを得ない環境に置くことができたと思います。

3年時からは、経済学を専攻として深めるためにミネソタ州にあるミネソタ大学に編入しました。ミネソタ大学ではJapan Student Association (JSA)という学生団体で活動しました。日本という共通項で集まったさまざまなバックグランドを持つ人と出会えてすごく良かったです。その反面、背景が異なる分、団体の方向性を決めることが難しかったです。みんな日本のことを知ってもらいたいという気持ちは一緒なので、議論を重ねて方向性を決めていきました。多様な価値観をすり合わせる中で、学ぶことが多かったですね。

のじ3Japan Student Association (JSA)の仲間たちと

 

◆地方の中高生が自分のやりたいことを考える機会を与える

——ギャップイヤー中はどんなことに取り組んできましたか?

大きく分けて3つあります。1つ目は東南アジアでのインターンシップ、2つ目は福島のスタディーツアー、3つ目は中高生向けのサマースクールです。

海外インターンシップとしては、9月にベトナムで短期プログラムに参加し、11月と12月の2か月はインドネシアにある日系企業でインターンをしていました。海外でのインターンシップに挑戦したのは以前から漠然と憧れていた海外での仕事を実際に経験してみようと思ったからです。どちらのインターンシップも非常に忙しく、中身の濃い時間でした。現地の方と日本人の働き方を比較でき、面白い経験ではありましたが、休日を有意義に過ごすことができず、早く東京に戻ってきていろいろなイベントに参加したいという気持ちが大きかったです。

2つ目は福島のスタディツアーです。福島の現状と可能性をもっと発信したいという思いから去年8月と今年3月に実施しました。地域の復興に向けて頑張っている方々の話を聞く機会を設け、彼らのビジョンや活動を知ることで、参加者が継続して福島に関わってくれるようなイベントを目指していました。実際、参加者の中で、イベント後に福島でインターンを始めた人や、就職した組織の中で福島のプロジェクトをやりたいと話してくれた人もいました。

のじ4スタディツアーで訪れた福島県浪江町の農家さんと参加者

 

3つ目は中高生向けに行われた2つのサマースクールに参加したことです。1つはデザイン思考を使ったアイデア大会のファシリテーターでした。もともとデザインやものづくりに興味があり、教える側としてデザイン思考を実践し体得したいと思い参加を決めました。2人のファシリテーターで3チームの生徒を担当していたのですが、彼らを導くことの難しさを痛感しました。もう1つは地域学習を通して中高生の主体性を育むことを目的としたキャンプのメンターです。地域の大人が取り組むプロジェクトに中高生が一緒に取り組むことで、彼ら自身が将来なにをしたいのかを探しました。地方に住む中高生にとって、自分がやりたいことを考える機会は非常に貴重なので、そういう環境を提供できることにすごくやりがいを感じましたね。

のじ5滋賀県で行われた中高生向けのサマープログラムにて

 

◆困難な状況にいる人の課題を解決したい

——将来の目標や夢があれば教えてください。

正直、自分が何をやりたいかはまだ分からないです。ただ、なんとなくは見えてきていて、それが途上国における環境問題の解決です。

途上国に興味を持ったきっかけは二つあります。一つは、震災を経験した際に国内外問わず多くの人が福島をサポートする姿を見たときです。その時に困っている人を助けようとしている人って純粋にかっこいいなと感じ、次は自分が世界で困っている人を助けたいと思うようになりました。

二つ目は高校時代の英語の授業で、ベトナム戦争の空爆から逃げてきた子供の写真を見にした時です。同じ年代でも環境が違うだけで命の危険に脅かされている人がいたこと、今でもそうした状況が世界中にあるという事実に衝撃を受けました。その頃から、恵まれた環境で育ってきた自分の経験やスキルを、特に途上国の困難な状況にいる人のために使いたいと思うようになりました。

今年の夏には途上国で国際協力に関わっている方に会うために、アフリカのウガンダを訪問しました。そこで自動車や工場からの排気物によって空気や川が汚れていくのを目の当たりにし、環境汚染が想像以上に住民の方々の暮らしに影響を与えているのだと実感しました。将来は、環境に負担をかけない技術を使って、水やエネルギーといった生活の基本的な部分を改善し、途上国で困難な状況に置かれている人々の課題を解決していきたいと思っています。

 


以上、4人目のゲスト野地雄太さんのインタビューでした。

1人目のゲスト(三高菖吉さん)のインタビューはこちら

2人目のゲスト(濵田太郎さん)のインタビューはこちら

3人目のゲスト(森山健太さん)のインタビューはこちら