Q03: 日本の四年制大学を行かなくても、留学できますか?

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日英中のトライリンガル・自力で海外進学の道を切り拓いた
“ねね”が日本の高校生のお悩みをサクッと解決!

<回答者プロフィール>Shirakawa
白川寧々 (Ning Neinei)
TAKTOPIA共同創業者。MITx Entrepreneurshipプログラムアドバイザー。
マサチューセッツ工科大学(MIT)経営学修士、アントレプレナーシップを学ぶ。中国生まれのフェリス女学院育ち。17 歳で一念発起し、塾にも語学留学にも一切頼らず、完全独学で、TOEFL、SAT、エッセイの洗礼を受け、Duke 大学に進学。卒業後は米会計系コンサルタントとして働く。英語圏での活躍を夢見る日本の学生の力になりたいと思い、英語学習プログラム「ネイティブ脳」をMITのFellowshipを受けて立ち上げる。

<今回のお悩み>

お名前:HN 海珠さん

はじめまして、寧々さん!
私は、今年度高校を卒業したものです。

質問の内容は、日本の四年大学を行かなくても、留学することは可能ですか? というものです。

私の両親の仲がよくなく、再来年には離婚する予定です。そのため、私も四年大学に行くのを諦め、就職か一年生の技術学校に行き、技術を身につけてから就職で悩んでいます。

どっちにしても大学に行く余裕はありません。

中学生の頃から留学をしたかったのですが、家の都合もあり、高校での留学は諦めました。でも、今は遅くなってからでもいいので夢を叶えたいと思うようになりました。

私は、将来は学校に行くことのできない子供たちや、水を飲むのに何時間も歩かなければならない環境下にある人々のために動けることをしたいと思っています。留学とは直接的に関係があることは語学や文化などで、それならば日本にいても学べると思います。しかし、狭い視野しか持てないと感じました。一度、高校のイベントでオーストラリアへ短期研修に行った時に、事前に調べてから現地に行くのですが、初めて知ることばかりで驚きました。特に、学校の授業は日本とは全く違い、衝撃を受けました!(笑)実際、経験しないと得れないものがあると感じました。

私はしっかりと世界を見てから、社会で生きたいと思いました。
なりたい職業に就くよりも、なりたい人間像に近づくことの方が幸福に思えます。

長い文になってしまい、申し訳ありません。アドバイスをお願いいたします!


【回答】
こんにちは海珠さん。
こんな真剣な相談をする相手に、私達を選んでくれたことをまず感謝したい。
君には、伝えたい事がたくさんある。そして、たぶん君にとっては良いニュースのほうが多いということを、個人的に大変嬉しく思う。

一言で言えば、君が現在達成したいと思っているゴールにたどり着くことは、多少困難が伴うけど、「君ならば」難しいことではない。

なぜなら、私はこの少ない相談文章から、【近い将来に必ず、自分らしい形で国際的に活躍することを容易にさせる条件】を海珠さんが持っていることを、十分感じ取ってしまったからだ。

私は、たくさんの学生の進路相談を受けてきた身として、

  1. 海外に出て多様性に触れ視野を広げることの価値に対する確信
  2. 将来活躍したいことの超具体的イメージ
  3. なりたい職業ではなく人物像が大事

既に君がもっている上の3つのマインドセットは、日本人の学生にとって一番大事で一番身に付けることが困難だということを知っている。

これは、いくら言葉でアドバイスしても、いくらお金をかけて色んなところに行っても、どれだけ英語の授業をとっても、自分で気づかない限り絶対に手に入らない貴重なものだから。

ここまで、自分のやりたいことを言語化できたなら、もう大丈夫。

お金とか学力(は、具体的な記述がないから状況はわからないけれど)とか、立ちはだかるであろう障害は、サクサク乗り越えるための方法があるし、同じようなことを成し遂げてきた先人は大量に存在する。

ここで、プラクティカルな話をしよう。

まず、「大学に行かなくても留学は可能か」について。
はい。100%可能です。簡単です。
しかも、大学を諦める必要なんてない。学びたい、視野を広げたい欲求があるのなら、大学は「後で行け」ばいい。特に北米では、高校卒業してすぐ大学に行かなきゃ人生のレールから外れるなんて、誰も思っちゃいない。

大学にいつ行くかは強制なんてされていない。
大学にいつ行くかは強制なんてされていない。

実際、私がメンターとして関わった日本人学生の中に、北米大学への進学を望んでいたけど高校の成績では希望の大学に入れないと判断し(北米の有名大学受験における高校の成績の大切さは言うまでもない)、まず某途上国で数年働いてから大学へ行くことを選んだ子がいる。そういう多様な人生経験は、あとあと受験の際に有利に働くことが多い。

また、カナダの大学に合格したのに親御さんから学資の支援を受けられず、1年間派遣バイトとして働き資金を貯め、1年遅れで今年の9月から飛び立つ予定の子もいる。北米の多くの大学は、そうやって合格実績を保留して「いつでもおいで」と言ってくれるのが普通だ。

私自身、日本から受験した際に、学費と生活費すべてを値札の3分の1くらいに値切った(これは色々な場所で何度も人に伝えてきた)。今年は幸いにも、日本の教え子の生徒たちが色んなレベルの北米大学に合格をすることができたけれど、そのほとんどがFinancial Aid(奨学金)をもらうこと、つまり学費を値切ることに成功している。

だから、今この時点でお金や学力が足りてないことは、海外の大学に進学することを諦める理由には少しもならない。専門学校や、大学へ行かない生き方を否定するわけではないが、そこは考慮に入れてみて欲しい。

かといって、今高校3年生で四年制大学入学への準備をしてきてない(と推測する)君は、じゃあどうすればいいかというと、ここで2個目のポイント「将来やりたいこと」へ移ろう。

そもそも、今やりたくて仕方ないことが、「発展途上国で学習機会を与えられない子どもたちの支援をすること」で、ちょうど今、四年制大学に通うだけの学資がないという状態なら、ちょうどいいから「将来」なんて言わずに今やりましょう。大学へ行ってなくても国際ボランティアなど、機会はたくさんあるから。

ちょっと話がそれるが、国際開発支援分野に興味があって、将来「いつか」JICAや国連で働いてみたい、だから留学したい!と相談してくる子はとても多い。

ちょっと待て!笑、といつも思う。

それ自体はとても応援したいんだけど、高校生の頃からその人生プランでいくと、以下の感じになる。

  1. 大学の学部は国際関係学
  2. 英語とプラスアルファもう一ヶ国語必要なのでフランス語を勉強
  3. 語学力を付けるために留学する
  4. 各種試験にパスするために勉強する

と、20代のうちにかなり努力をしなきゃいけないんだが、高校の時点で「将来つく職業や働きたい機関」のために頑張るプランはできていても、そもそも実践的に発展途上国で支援をしてみるという現場経験がそのプランに織り込まれていないことが多い。つまり、先進国生まれの先進国育ちの目線オンリーで超具体的な目標へ机上の努力をしはじめてしまう。それは結構危険なことだ。

私は例えば、電気やネットや綺麗なトイレや暖かいシャワーがないような場所では1日も生活したくない!と自分の経験を根拠に言い切る自信がある。国際支援などは、話題としては大好きだし、応援したいが、自分が現場でどうこう、とかは絶対に無理だ。

例えば、そんな私みたいなのが強い憧れのもと上記1~4の努力を重ね、現場に立った瞬間に心が折れたらどうしてくれよう。「こんなはずじゃなかった」の呪詛のオンパレードになってしまうだろう。

将来「いつか」就きたい仕事のために、下積みとして、その現場とは割りと関係ない勉強を何年も何年も続け、せっかく就いた仕事が向いてなかった時に気づくのでは遅すぎるというのは、国連職員でも医者でも弁護士でもよくあること。

そういうことを予防するために、学生たちには、

「将来就きたい職業の現場に一番近いところに、今すぐ飛び込んでみなよ!」

とアドバイスすることがよくある。

そういう機会をたくさん与えてくれるのがアメリカの大学のいいところでもある。大学どころか高校の時点で、ボランティアで外科手術の現場を手伝った経験で医者になると決めた友達は、血が怖いと実習で判明して医学部を中退する心配はない。途上国支援がしてみたかった友達は、大学2年の夏休みに2時間で書いた企画書を提出しただけで、一円も自腹を切ることなく、希望する地で興味があるプログラムを実践する機会を与えられた。その子は冷たいシャワーしか出ないのは本質的に耐えられないと、金融マンとして卒業していったが。

そういう資金がなくても、ボランティアの受け入れをやっている団体は大量にある。私の知る限りでも、ミャンマーやカンボジアで学校作っている知り合いはそこそこいるし。
そういうとこにこの春から飛び込んでみなよ。
紹介するよ。交渉は自分次第だけど。

これは学びについても同じことが言える。大学の学部を決めるときに、超なんとなく「国際関係学をやってみたいです!」「経営学をやってみたいです!」とか言わないと意識低いとか思われそうで頑張ってる子もたくさんいるけど、それがどんな学問か、わかってる子はとーーーっても少ない。

けど、その最高の授業を(無料で)5秒で体験できる講座はedx.orgに並んでいる。広く世界を見渡せば、edxでとった認定単位(約5,000円の出費とある程度の努力で入手可能)をスキルの証明とみなし学位なしで雇ってくれる企業もたくさんある。特にプログラミングなんかで。この前、MITの認定単位授業をオンラインで取りまくって本当のMITに見せたら入学を許可されたモンゴル人青年の例はいうまでもない。

 

海珠さんは、「なりたい職業より、なりたい人物像」という、この時代にまさにぴったりなマインドセットを持っている。そして、この春から「合格したので入らなきゃいけない大学」も、幸いなことに存在しない。途上国で子どもたちの就学機会を増やしたければ、そういう団体に声をかければいい。お金がなくても世界の一流大学のコンテンツを学びたければ、edxに登録すればいい。そして、そうやって経験値と英語力と知識知恵を自前で積み上げながら、海外で学位が取りたかったら、働いてお金をためたり奨学金をとったりすればいい。この春から大学に行かなくてもいい君は、自由の身なんだから、これまでにあげた、どれでも好きなことが出来る立場にあるんだよ。

すごく楽しみな感じじゃないか。ある意味羨ましい。

どうだろう、役に立ったかな?

迷ったらまた何時でもおいで。

ねね